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COLUMN ── 006

記録の負担を減らす前に、
記録を棚卸しする

2026-08-15 | ミツノワ | #記録負担 #業務改善 #医療DX

この記事の要点

AIで記録を速くする前に、その記録は誰が何のために読むのかを問う。読み手なし・二重入力・転記の3分類で棚卸しし、AIを入れるのはその後にする方法。

「記録に時間がかかる」という声は、医療・介護のどの現場でもまず最初に挙がります。そしてAIの話になると、多くの場合いきなり「AIで記録を速くする」に飛びます。

ただ、その前に一つだけ確かめたいことがあります。その記録は、誰が、何のために読んでいるのか。速く書けるようになっても、誰も読んでいない書類なら、負担は減っても価値は増えません。この記事では、AIを入れる前に通す「ミツノワ式・記録の棚卸し3分類」を紹介します。

速くする前に、量を見る

記録の負担は「1枚あたりの時間 × 枚数」で決まります。AIが効くのは前者だけです。後者――そもそもの枚数――は、AIでは減りません。むしろ書きやすくなることで増えることさえあります。

速く書ける仕組みは、
要らない書類も速く増やす。

だから順番は、棚卸し → 減らす → 残ったものにAIです。これは現場DX 5ステップの③と④の関係そのものです。

ミツノワ式・記録の棚卸し3分類

手元の記録を、次の3つのどれに当たるかで仕分けします。3つのどれにも当たらない記録は、読み手がいて、一度しか書かず、写しもない――つまり健全な記録です。触らなくて構いません。

その記録、誰が何のために読む? 分類A|読み手なし 誰も読んでいない 目的を誰も答えられない → まず「やめる」を検討 分類B|二重入力 同じ内容を2か所以上に 別々の様式で書いている → 「まとめる」を検討 分類C|転記 すでにある情報を 写し替えているだけ → 「簡単にする」を検討 ここまでやって、残った記録にだけAI
図1|ミツノワ式・記録の棚卸し3分類(AIを入れるのは、仕分けが終わってから)

分類A:読み手のいない記録

A「何かあったときのため」で残り続けている書類

見分け方は簡単で、「この記録、最後に誰かが読んだのはいつですか」と聞いてみることです。答えが出てこない書類が、たいてい1つは見つかります。始めた理由が数年前の申し送りや、当時いた担当者の工夫だった、というのもよくある形です。

ただし、やめる前に必ず確認が要ります。法令・制度・第三者評価・監査で求められている記録は、読み手が院内にいなくても保存の必要があります。診療記録や介護記録の保存義務については、年数や範囲がものによって異なり、改定もあります。最新の原典を確認してください。この記事では具体的な年数や条文は扱いません。判断は所属の管理者・事務部門と一緒に行ってください。

⚠ 「たぶん要らない」で消さない。やめる候補として挙げる → 根拠を確認する → 管理者と決める、の3段階を踏んでください。

分類B:二重入力の記録

B同じ出来事を、様式を変えて2回書いている

紙とシステム、部署の日誌と全体の報告、委員会用のまとめと個別の記録。書く先が違うだけで、中身はほとんど同じ――という組み合わせは珍しくありません。

ここでの一手は「まとめる」です。とはいえ、様式そのものを統合するのは相手のある話で、時間がかかります。現場で先に効くのは、「先に書く1本」を決めること。どちらか一方を原本と決め、もう一方はそこから作る、という運用にするだけで、考え直す手間が半分になります。この「原本から派生させる」形になって初めて、AIの下書きが効いてきます。

分類C:転記だけの記録

Cすでにある数字・情報を、写し替えている

バイタルの値を別紙に書き写す、シフト表から集計表に打ち直す、日付や氏名欄を毎回手で埋める。新しい判断が1つも入っていない作業がここに入ります。

手当ては「簡単にする」。項目を減らす、選択式にする、初めから埋まっている欄を作る、集計を関数に任せる。写し間違いが起きなくなるという副次的な効果もあり、ここは投資対効果が見えやすい領域です。

なお、転記を減らす目的でシステム間の連携を検討する場合は、情報の持ち出し範囲の確認が別途必要になります。院内の情報管理部門への相談を先に入れてください。

残った記録に、はじめてAIを当てる

A・B・Cを通したあとに残るのは、読み手がいて、原本で、判断が入っている記録です。ここが本当の勝負どころで、AIが手伝えるのは主に下書きと言い換えの部分になります。

ただし、AIに任せてよい範囲には線があります。どこまで任せ、どこから人が持つかは文書作成をAIに任せるとき、任せてはいけない部分で扱っています。もう一点、患者・利用者・職員の個人が特定できる情報を外部のAIサービスに入力しない、というのは棚卸しの段階と関係なく守る前提です。

今日は、1種類だけでいい

全部の記録を一度に棚卸しするのは無理です。できていなくても大丈夫です。今日やるなら、「いちばん面倒な記録」を1種類だけ取り上げて、A・B・Cのどれに当たるかを考えてみてください。どれにも当たらなければ、それは減らす対象ではなく、AIで下書きを助ける対象です。それが分かるだけでも、一歩進んでいます。

💡 この記事は、業務改善の一般的な考え方を記録業務に当てはめた整理です。法令・制度上の保存義務については記載しておらず、判断の根拠にはできません。必ず最新の原典と所属の管理部門でご確認ください。

この記事は、現場の実践から生まれています。

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