COLUMN ── 007
この記事の要点
AIに任せてよいのは構成・言い換え・下書き。任せてはいけないのは事実・数値・固有名詞・最終責任。境界線の引き方と、提出前の3点確認の手順をまとめました。
文書作成は、AIがいちばん手伝いやすい仕事です。白紙から書き出すつらさは、たしかに軽くなります。
一方で、実際に使ってみると「一見ちゃんとしているのに、細かいところが違う」文章が出てきます。しかも、その違いは読み返しただけでは気づきにくい。だからこそ、任せる範囲を先に線引きしておく必要があります。この記事では「ミツノワ式・任せる/任せない 3点確認」として、境界線と提出前の手順をまとめます。
覚え方はシンプルです。AIに任せてよいのは「言い方」、任せてはいけないのは「中身」。
この線引きが必要なのは、AIが「知らない」と言うのが苦手だからです。空欄を埋めるように、もっともらしい日付・数字・名称を書いてしまうことがあります。文章としては自然なので、書いた本人でも見落とします。
「この報告書に必要な見出しを並べて」「この内容で足りていない観点はある?」という使い方です。ここでは事実を作らせていないので、間違いが混ざるリスクが低く、効果は大きい領域です。
専門用語の多い文を家族向けにやわらげる、長い一文を短く分ける、ですます調に揃える。元の文章が自分の書いたものである限り、中身は増減しません。ここが最も安全で、最も時短になります。
白紙から書き出す負担を消す使い方です。ただし出てきたものは「たたき台」であって「原稿」ではありません。埋まっている数字や名称は、この時点ではすべて仮のものだと考えてください。
| 領域 | なぜ任せられないか | 人がやること |
|---|---|---|
| 事実 | 実際に起きた経過を知っているのは現場の人だけ | 経過は自分の言葉で先に書き、AIには整えさせる |
| 数値 | 日付・回数・金額・期間はもっともらしい値が入りやすい | 元資料と1つずつ突き合わせる |
| 固有名詞 | 人・施設・制度の名称は似た別名に化けることがある | 正式名称を原典・台帳で確認する |
| 最終責任 | 出した文書の責任は、常に署名した人が負う | 自分の名前で読み直してから出す |
AIは、文章を速く作る道具。
正しさを保証する道具ではない。
細かいチェックリストを作っても、忙しい日には飛ばされます。だから3つに絞ります。この3つだけは、印刷やメール送信の前に必ず通す。
本文の数字に指を当てて、元の資料と1つずつ照らす。AIが出した文章に残っている数字は、自分で確認したもの以外すべて削除する、くらいで構いません。
人名・施設名・制度名・様式名。特に制度や様式の名称は、似ているが違う名前が入り込みます。制度・法令・診療報酬に関わる記述がある場合は、必ず最新の原典を確認してください。AIの説明を根拠にしないでください。
最後は責任の確認です。「この文書は自分が書いたものとして出せるか」を、書き手ではなく提出者の立場で読み直します。声に出すと、自分の言い回しでない部分がはっきり分かります。違和感が残る文は、書き直してください。
ここまでは「出てきた文章をどう扱うか」の話でした。その手前に、動かせない線があります。患者・利用者・職員の個人が特定できる情報を、外部のAIサービスに入力しない。氏名やIDだけでなく、生年月日・施設の実名・珍しい状況の組み合わせも同じ扱いです。下書きを頼むときは、匿名化した形か架空の設定に置き換えてから渡します。
また、そもそもその文書を作り続ける必要があるかどうかは、AIの前に確認できます(記録の負担を減らす前に、記録を棚卸しする)。業務全体の順番は現場DX 5ステップにまとめています。
3点全部を毎回やるのは、最初は重く感じるかもしれません。できていなくても大丈夫です。1つだけ選ぶなら「数字と日付の突き合わせ」。文書の信頼を最も直接に損なうのがここで、確認にかかる時間もいちばん短くて済みます。
💡 この記事は、生成AIを文書作成に使う際の一般的な注意点の整理です。特定のサービスの性能や、確認による効果を保証するものではありません。制度・法令に関わる記述は必ず最新の原典をご確認ください。
この記事は、現場の実践から生まれています。
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