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COLUMN ── 014

「小さく試す」の“小さく”を、
数字で定義する

2026-08-15 | ミツノワ | #業務改善 #医療DX #課題が言語化できない

この記事の要点

小さく試そう、で終わらせない。1業務・1週間・1人から始め、計器・撤退基準・判断日の3点を先に決める。現場の小さな実験を1枚に落とす手順を図解で。

「まずは小さく試してみましょう」。会議でこの言葉が出ると、その場の空気は良くなります。反対する人もいません。そして数ヶ月後、その話は誰の口にも上らなくなります。

原因は、“小さく”が数字になっていないことです。範囲が決まっていない試みは、終わりも決まりません。終わりが決まっていなければ、成功も失敗も判定されず、ただ静かに消えます。

“小さく”を、3つの数字で決める

まず範囲です。迷ったら、この3つの「1」から始めてください。

1業務・1週間・1人

「それでは何も分からないのでは」と思われるかもしれません。逆です。1人が1週間続けられない方法は、10人ではまず続きません。小さい試行は結論を出すためではなく、これ以上広げてよいかを判断するためにあります。

ミツノワ式・実験の3点セット

範囲を決めたら、始める前に3つを紙に書きます。計器・撤退基準・判断日。この3つが埋まっていない試みは、まだ実験ではなく「なんとなくの試し」です。

ミツノワ式・実験の3点セット 3つとも「始める前」に決める。始めてからでは決められなくなる 1 計器 何を測るか 例: 下書きにかかった分数 /直した回数/やめたい度 1つか2つに絞る 2 撤退基準 どうなったらやめるか 例: 3日連続で使わなかったら /手直しが元より増えたら やめる条件を先に書く 3 判断日 いつ結論を出すか 例: 8日目の朝10分だけ /誰と決めるかも書く カレンダーに入れる 3つが空欄のまま始まった試みは、成功も失敗もしないまま消えていく 「やめる」と決められることは、失敗ではなく成果のひとつ
図1|実験の3点セット。とくに撤退基準は、始めたあとでは情が入って決められなくなります

計器:何を測るか

「業務が楽になったか」では測れません。数えられる形にします。時間(この作業に何分かかったか)、回数(差し戻し・手直しが何回あったか)、気持ち(この作業のしんどさを5段階で)。3つ目を侮らないでください。時間が変わらなくても心理的負担が下がったなら、それは立派な成果です。

計器は1つか2つに絞ります。多いと記録が面倒になり、記録が面倒になると実験そのものが止まります。

撤退基準:どうなったらやめるか

ここがいちばん飛ばされる項目です。しかしやめる条件を先に書いておくと、やめることが「失敗の宣告」ではなく「予定どおりの手続き」になります。これは、次に試す人のための心理的な安全装置でもあります。

書き方の例:「3日連続で使われなかったら中止」「手直しの時間が、元のやり方より増えたら中止」「1人でも“これは危ない”と感じたら即中止」。最後の1つは、医療・介護の現場では欠かさず入れてください。

判断日:いつ決めるか

日付を決め、カレンダーに入れます。「落ち着いたら振り返る」は永久に来ません。判断日にやることも3つに決めておくと、10分で終わります──①計器の数字を見る ②やってみた人の一言を聞く ③続ける/やめる/変えて再実験のどれかを選ぶ。

1週間の実験を、時間軸で並べると

0日目 3点セットを書く 所要 15分 1〜7日目:1人・1業務でやってみる/毎日1行だけ記録 8日目=判断日 10分で決める 続ける(2人へ) 変えて再実験 やめる(記録) 「やめる」を選んだときも、やめた理由を1行残せば、それは次の人への資産になる
図2|1週間の実験の流れ。判断日に選ぶのは3択だけ。迷う余地を先に減らしておきます

医療・介護の現場で試す場合の前提を2つ。①検証はダミーデータから。実在の患者・利用者・職員の情報は、外部のAIサービスに入力しないでください。②AIの出力は、人が確認してから使う。実験だからといって、この2つは省けません。公開・共有まで進む場合はAIツール公開前チェックリストもあわせてどうぞ。

「やめられた」実験は、成功している

3点セットを決めておくと、うまくいかなかったときに「失敗した」ではなく「合わないと分かった」と言えるようになります。この言い換えができる組織では、次の実験が出てきます。できない組織では、誰も二度目を言い出しません。

そもそも実験が続かない構造についてはなぜ、現場のAI活用は「いい話」で終わるのかで、実験の前に「何を数えるか」を決める考え方は健康経営の第一歩は、数えることから始まるで扱っています。

今日は1つだけで十分です。頭の中にある「試してみたいこと」を1つ選んで、計器・撤退基準・判断日の3行だけ書いてみてください。それ以上は、まだ書かなくていいのです。

この記事は、現場の実践から生まれています。

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