ARTICLE ── COMMUNITY
この記事の要点
精神科医が運営する医療・介護向けAIコミュニティ、発足1ヶ月半のふりかえり。失敗の共有が場の熱量になった話。
精神科医をしながら、医療・介護の現場向けにAI・DXの小さなコミュニティ「精介AI」を運営しています。
発足から約1ヶ月半。うまくいったことより、スベった話のほうが場を育てたという、ちょっと不思議なふりかえりです。
同じように「現場でAIの話をしたいけど、どう始めればいいか分からない」という方に、うちの失敗と学びをそのまま置いていきます。きれいな成功譚ではないので、安心して読んでください。
数字はどれも小さいです。でも、この小ささのなかに、あとから効いてくる学びが3つありました。
院内でAIの説明会をやりました。スライドも作り込みました。デモも用意しました。
結果、反応はいまひとつ。「すごいですね」で終わってしまい、翌日から何かが変わる気配はありませんでした。
原因はシンプルで、説明していたからです。
その後、方針を変えました。大人数への説明会をやめて、部署ごとに「隣で一緒に触る」時間を作る。名付けてAIキャラバン。知っている人が横にいるだけで、心理的なハードルは目に見えて下がりました。
そして、このスベった話をコミュニティにそのまま投稿したところ、うちの投稿の中でいちばんコメントがつきました(閲覧19・コメント7。投稿画面で確認できた概数です)。
成功の報告は「すごいですね」で終わる。
失敗の報告は「うちもです」から会話が始まる。
これが今回いちばんの発見でした。
生成AIを使えば、現場向けの小さなツールは驚くほど簡単に作れます。でも、それを公開してよいかは別の確認が要る。
あるメンバーの投稿をきっかけに、公開前に「情報の扱い・保存のされ方・医療判断への影響」を分けて確認する、という視点がコミュニティの共通言語になりました。まずはダミーデータ・限定公開・注意書きから。
AIの話をする場に、最初に「安全文化」が根づいたのは、この投稿のおかげです。
前述のとおりです。福祉現場のメンバーからは「これはAIに限らず、人材育成でも同じ」というコメントをもらいました。たしかに、研修で伝わらないことが、隣で一緒にやると伝わる。AIはその一例に過ぎないのかもしれません。
AIは一般知識には強い。でも、院内ルール・暗黙知・例外対応は知りません。
だから現場でのAI活用は「AIに聞く」の前に、「うちの判断基準を言語化する」という地味な作業が要る。コミュニティが「正解を決める場」ではなく「次に安全に試すための論点を持ち寄る場」になってきたのは、この気づきからでした。
逆に、ニュースの紹介や一般論は反応が薄い。現場の手触りがあるものだけが会話になる、というのは発信全般に言えそうです。
※ サンプルが小さいコミュニティでの感覚値です。規模が変われば変わるかもしれません。
1回の登壇を、その場限りにしない。話したことを記事に、出た質問をFAQに、必要になったものをツールにする。コンテンツを作るためにコミュニティを運営するのではなく、コミュニティが活動した結果、コンテンツが自然に生まれる方向を目指しています。
この MITSUNOWA LAB が、その置き場所です。
10人のコミュニティの、スベった話のふりかえりでした。
大きなDX構想より、まず目の前の1つ。完璧な説明会より、隣で一緒に触る5分。うまくいかなかったら、それをそのまま共有する。
同じように現場で小さく始めている方がいたら、よければあなたの「スベった話」も聞かせてください。失敗の共有から始まる会話が、いちばん実りがある気がしています。
もちろん、今は見ているだけでも大丈夫です。見ていること自体が、場を育てる参加だと思っています。
この記事は、現場の実践から生まれています。
MITSUNOWA MEDIA & LAB の記事・資料は、精介AIコミュニティで持ち寄られた「やってみた話」が元になっています。読むだけの参加も歓迎です。持ち寄る側になると、あなたの実践も記録として残ります。