COLUMN ── 他業界に学ぶ 001
この記事の要点
中小企業財務の定番知識を、医療・介護の経営文脈に翻訳。債務償還年数・経営者保証・現預金の物差しを図解で。
医療・介護の経営で、意外なほど学ぶ機会がないのが「銀行との付き合い方」です。診療報酬・介護報酬は学んでも、借入と保証の作法は誰も教えてくれない。
そこで今回は、中小企業財務の発信で知られるYouTube「中小企業の財務チャンネル」(税理士法人古田土会計)の公開動画群から学んだ考え方を、医療・介護の文脈に翻訳して3つに絞って紹介します。
📚 出典と読み方: 本コラムは同チャンネルの公開動画の視聴に基づく学びの紹介です(転載ではありません)。経験則のラベルが付いた数値は同チャンネルで語られる実務上の目安であり、法令・制度上の基準ではありません。個別の判断は必ず税理士・金融機関にご相談ください。
院長・理事長・施設長がよく口にする目標が「早く借金を返して無借金に」。しかし同チャンネルが繰り返し説くのは、順番が違うという話です。
昭和・平成は「借金は悪だ」。
令和は「経営者保証が悪なだけ」。
借入そのものは、設備投資の時間を買う道具。本当に怖いのは、経営者個人が連帯保証を負ったまま代替わりや相続を迎えることです。実際、金融庁の公表統計では、経営者保証に依存しない新規融資の割合は2015年頃の約12%から2024年度には約53%まで上がっています(金融庁公表値・原典確認を推奨)。保証は「外せるもの」になったのです。
医療法人への翻訳: 承継を考え始めたら、繰上返済より先に「この借入、保証を外せますか」を金融機関に聞く。ガイドライン上の要件は大きく3つ──①法人と個人のお金の分離 ②法人単独で返せる財務 ③試算表を出せる情報開示。聞くだけならタダで、こちらから聞かない限り銀行側から提案されることはほとんどない、とも語られています経験則。
「借入◯億円」という絶対額だけでは、重いのか軽いのか判断できません。銀行が実際に見ている代表的な物差しがこれです。
医療法人への翻訳: 病院・施設は建物・設備の借入が大きく見えがちですが、減価償却費が大きい業態は分母も大きい。絶対額に怯える前に、この式で自法人を測ってみる。理事会・幹部会でこの1つの数字を共有できるだけで、銀行との会話の質が変わります。
同チャンネルの中核思想は一貫して「利益は演出できるが、現預金はウソをつけない」。目安として語られるのは手元現預金=月商の2〜3ヶ月分経験則です。
医療法人への翻訳: 診療報酬の入金は約2ヶ月遅れ──つまり医療機関は構造的に「2ヶ月分の運転資金」を常に立て替えている業態です。だからこの物差しは医療でこそ効きます。加えて、災害・感染症流行・システム障害で収入が細る月に、給与を何ヶ月払えるか。現預金の月数は、経営の安心の物差しであると同時に、職員の健康経営の土台でもあります。
①承継予定があるなら、借入の経営者保証の有無を一覧にする(どの借入に誰の保証が付いているか)。②債務償還年数を1回計算してみる。③現預金が月商の何ヶ月分かを数える。3つとも、手元の決算書で今日できます。
もちろん、ここに書いたのは一般論です。実際の判断は法人の状況次第なので、顧問税理士・取引金融機関と話すときの「共通言語」として使ってください。無理にすべてやる必要はありません──まず1つ数えるだけでも、見える景色が変わります。
この記事は、現場の実践から生まれています。
MITSUNOWA MEDIA & LAB の記事・資料は、精介AIコミュニティで持ち寄られた「やってみた話」が元になっています。読むだけの参加も歓迎です。持ち寄る側になると、あなたの実践も記録として残ります。