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TALK ── 005

精神科における医療DX
── 効率化では終わらせない病院DX

2026.08 | 企業内講演(20分) | ミツノワ・髙山英也(精神科医)

この講演の要点

DXの目的は、記録を早く終わらせることではありません。効率化で生まれた時間・情報・技術を、これまで届きにくかった支援へ再投資するところまでが本題です。院内の困りごとから始め、小さく試し、患者・家族・地域へ返していく——その循環を、実際の実証と一つの症例から話しました。

本スライドは実際の講演内容から演者自身の知見のみを抜粋・再構成した「講演抜粋版」です。主催企業・イベントに関わる情報、第三者の施設名・企業名・製品名・数値は削除し、症例は発表用に一般化しています(抜粋方針は資料2枚目に明記)。なお本講演は企業主催であり、演者は主催企業から講演料を受領しています(講演時にCOI開示済み)。引用は公開情報のみ出典付きで残しています。
📥 講演抜粋版PDF(15枚・無料・登録不要) 他の活動レポートを見る

結論:DXは「余白」を患者利益へ変える

効率化それ自体は目的になりません。生まれた余白を何に使うかで、DXは「IT導入」にも「ケアの再設計」にもなります。院内で完結させず、患者・家族・地域まで流れていく循環として設計しました。

1 困りごとを拾う 時間・負担・迷いを言葉に 2 小さく試す AI・音声・センサーを触る 3 患者利益に返す 見通し・安全・理解の質 4 地域へつなぐ 本人・家族・支援者へ翻訳 この循環が回り始めたとき、DXは「IT導入」ではなく「ケアの再設計」になる
図1|効率化を出発点にして、患者・地域まで価値を流す

始め方:システムからではなく「困りごと」から

ありがちな順番は「新システム導入 → 使い方説明 → 現場が合わせる」。これを逆にして、現場の困りごと → 小さく試して効果を見る → 改善して広げるにしました。対象は診療に限らず、文書・労務・会議・教育まで含めます。

AI体験会:百見は「一触」に如かず

「便利です」と説明しても現場は動きにくく、デモを見せても自分の業務への転用は想像しづらい。自分の言葉・自分の困りごとを入れて触ったときに、はじめて当事者意識が生まれます。肝心なのはAIを教えることより、職員が触るまでの敷居をどれだけ下げられるかでした。

実際、触った後に現場から出てきた「種」は4領域に広がりました。記録・文書(カンファレンス記録、看護サマリー、インシデントレポート)、患者理解・診療支援(心理検査結果の説明資料、クライシスプラン、退院支援会議の整理)、教育・人材育成(研修資料、理解度確認問題、新人向け手順書)、業務改善・管理(業務改善提案書、チェックリスト簡素化、集計・転記の簡素化)。※ 実運用・実証中・職員提案・検討中を含みます。

AIの位置づけ:判断ではなく、思考支援・作成支援

ここを曖昧にすると現場の信頼を失います。AIが判断を代替するのではなく、人が確認・修正・最終判断をする——という線を先に引きました。

○ AIに任せやすいこと

  • 文章の下書き
  • 要約・構造化
  • 論点・選択肢の抽出
  • 専門用語の言い換え
  • 資料のたたき台作成

✕ AIに任せないこと

  • 診断・処方の最終判断
  • 緊急時の即時判断
  • 未確認情報の断定
  • 個人情報の安易な入力
  • 責任の所在をAIに移すこと

症例:“拒否”の正体は、見通しのなさだった

障害福祉サービスの利用に慎重で、精神保健福祉士との関わりを避けていた方がいました。表面的には「利用したくない」=拒否にも見えます。しかし対話を重ねると、しんどさの正体は「この先、自分がどうなるのか分からない」——見通しのなさでした。

そこで、公開されている制度情報をAIで整理し、本人向けに流れ・準備・選択肢を資料化し、精神保健福祉士と制度・運用面を確認・修正したうえで、読み返せる形で本人へ渡しました。結果として本人から「次はこういう資料がほしい」という新たな支援ニーズが出てきたことが、いちばんの収穫でした。

この症例から学んだこと

必要だったのは制度の説明ではなく「見通し」でした。不確実性(何が起きるか分からない)を、構造化・翻訳(現在地・手続き・選択肢を本人の言葉に)を経て、自己決定(読み返せる・次に欲しい支援を言える)へつなぐ。AIの価値は資料を作ることではなく、本人に必要な情報を、届く形へ変えられることにあります。

※ 症例情報は発表用に必要最小限へ一般化した単一症例の観察的経過であり、個人が特定される情報は含みません。因果関係を示すものではありません。センサー・音声入力の実証はいずれも企業との共同実証で、個別の企業名・製品名は本抜粋版では割愛しています。

この資料は、実際の登壇から生まれています。

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